イベント開催報告

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イベント開催報告

山口の連歌と俳諧―宗祇から菊舎まで―

 

 万葉集以来、日本ではさまざまな文学ジャンルが生まれました。大内氏が栄えた室町時代に最も流行った文学形式は、連歌(れんが)です。天皇から市井人まで、何かというと連歌を催していました。現在はツイッターやフェイスブックが流行っていますが、そういう感覚かもしれません。
 連歌は、和歌の上の句(五七五)がまず出され、そこに他の人が下の句(七七)を付ける、というのが基本です。何人もの人が、下の句を考えるために、一つの上の句の世界に没頭して、そうしてそれぞれが作った下の句の中から秀作が選ばれ(競争の要素がここにあります。これも人気の理由の一つ。賭けごとにもされていました)、新たに付けられた下の句の世界に移り、今度は上の句を考えと、集団でヴァーチャルな世界を旅する感覚が味わえたこととおもいます。それが一体感につながり、盛り上がっていったとおもいます。
 いまでは忘れ去られた連歌ですが、明治までは、ここ山口でも盛んに作られ、多くの記録が残っています。

 9月22日から11月18日まで、山口市歴史民俗資料館で、「山口の連歌と俳諧―宗祇から菊舎まで―」が開催されています。
 連歌についての企画展は、全国的に見ても珍しいものです。
 歴史好きだけでなく、文学好きにも、いや文学好きこそたまらない企画展です。見ているだけで当時のヴァーチャル空間に引き込まれます。

 連歌という企画展は例が無いため、こういったパネルも前代未聞かもしれません。すべて同資料館の手作りです。気合いのはいった企画展です。連歌は奥が深く学ぼうとしたら複雑なものになりますが、一般の方にむけてわかりやすく説明されています。

 見づらい画像ですが(もとはくっきりときれいです)、連歌を行っている時の様子です。簡単にいえば、みなが作った句からいいものを選ぶ先生がいて、その句がルールにのっとっているかチェックしながら清書する人がいて、床の間には連歌の神様天神像を飾ってと、行われていました。

 最初のコーナーは「宗祇来山−大内氏と連歌」です。
 宗祇は連歌の神様といっていい存在で、大内氏の招きに応じて山口まで来たこともあります。いまではあまり知られていませんが、江戸時代は、室町時代の文化人ビッグ3に、雪舟・一休と並んで挙げられていたすごい方です。知らない人はいなかったくらいの有名人です。
 その宗祇を描いた肖像画などが展示されています。

 そして書写本にはなりますが、室町時代の連歌を書いたものが展示されています。大内氏のもとでは家来を集めて毎月一回必ず連歌の会を行うことが決められていましたし、なにより『新撰莵玖波集』という連歌の選集を作成するにあたっての最大の後援者が大内政弘で、数々の記録が残されています。

 つづいて江戸時代をあつかった「町衆の中へ−毛利氏とその時代」のコーナーです。戦争ばかりしているようなイメージの毛利元就・隆元・輝元も、連歌の興行や奉納をよく行っていました。当時の連歌の世界でトップの位置にいた里村紹巴(じょうは)を師匠に仰ぎ、その後も代々里村家から学んでいました。

 里村家と毛利家などとの師匠弟子関係の系統図も紹介されています。江戸時代の山口の町の文化は町衆によって担われていました。そのことがよくわかるものです。

 江戸時代になると、当時のものがいくつも残っています。主として山口県立文書館に所蔵されています。

 連歌は懐紙(かいし)というものに記録しています。展示されているものがそれです。この懐紙についてもパネルで説明されています。

 ほぼ新聞紙1ページ文の大きさの料紙を横に折って折り目を下向きにした紙の裏表に句を書きつけます。それを重ねて右端で綴じたり、巻物に仕立てたりします。このように図解されるとわかりやすいです。

 そして連歌はこういう金や銀で模様を描いたきれいな紙に清書されます。書をしているかたも見学に来られたら勉強になると思います。

 こちらは、「山口と俳諧−美濃派の伝来と広がり」のコーナーに展示されている、田上菊舎(たがみ きくしゃ)の掛け軸です。田上菊舎は現在の下関市(田耕町)に生まれ、美濃派の俳人として活躍した方です。女性ながら全国を旅したことでも有名です。
 なぜ連歌と俳句がセットで企画展?とおもわれる方もいるでしょう。じつは俳句は連歌の最初の句(発句)が独立してできたジャンルなのです。母子の関係のようなものでしょうか。

 つづいて「座の文芸の民俗史−雑俳の流行と芭蕉句碑」のコーナーです。
 山口では、俳句の中でも美濃派(松尾芭蕉の流れをくむ、地方系の俳壇。蕉門十哲の一人である各務支考(かがみしこう)が開いた一派で、支考の出身と活動の舞台が美濃であったためにつけられた派名)が隆盛を誇っていました。その関係資料が展示されています。
 市内各所には、江戸時代に建立された松尾芭蕉の句碑があちこちにたっています。なぜ松尾芭蕉なんだろうと疑問におもっていましたが、美濃派の俳人が多いときいて納得しました。
 こちらは、旧福田屋外郎の一角に建立されている松尾芭蕉の句碑の拓本です。今回のために同資料館の方が拓本されました。

 こちらは平川の高倉社や岩淵の厳島神社へ奉納されたされたもので、「前句付(まえくづけ)」とよばれる俳句の一種です。俳句も神様と結びついています。もしかしたら名句が埋もれていないかとついまじまじと見てしまいます。

 さて、もっとも美しい展示品がこちらです。
「山口伝存の稀書」の「連歌懐紙」のコーナーです。金や銀がくっきりと残っているのがわかりますか。

 こちらは10月2日から14日までの短期間展示の「仮御手鑑」です。大内義隆の時代から江戸時代まで、様々な連歌師の作品が並んでいます。

 最後は「座の民俗文芸史U 祇園祭のなかの連歌」のコーナーです。
 現在も1週間行われている山口祇園祭ですが、江戸時代はなんとその開催期間中ぶっとおしで連歌を行っていたというのです。その記録です。現在の米屋町商店街の一の坂川側に笠着(置)堂(かさぎどう)というのがあり、そこに先生などが滞在し、祭りで道行く人が寄って連歌の句を差出ていたそうです。御輿とならんで人気のイベントという話です。昔のほうがいまより文化的で風流だった気がします。現在でしたらさしずめ、飛び入り歓迎カラオケ大会がせいぜいでしょう。

 このたびの企画展は歴史好きな方だけでなく、和歌・俳句・書好きな方も必見です。
 この展示会は前期(10月21日まで)と後期(10月23日から)に分けられています。また前期後期のなかでもさらに一部展示替えもあります。
 ぜひ何度も足を運んでください。一般100円、小中学生50円、70歳以上は無料です。月曜日が休館日です(祝日の場合は翌日)。
 
 期間中は下記の通り関連イベントが行われています。
 問い合わせ先は、いずれも山口市歴史民俗資料館【TEL】083−924−7001まで。
 ぜひ参加してみてください。今回は、パネルでは紹介しきれなかった歴史逸話など詳細な説明をきけば、面白さが倍々々増の企画展とおもいます。必聴です。

■ ギャラリートーク「連歌・俳諧からみる山口の文化」
日時:10月14日(日)午後1時30分〜
場所:山口市歴史民俗資料館「山口の連歌と俳諧―宗祇から菊舎まで―」会場
講師:学芸員廣田野乃子

■ 特別講演会「山口の連歌と俳諧―貴重資料の紹介をかねて」
日時:11月3日(土)午後1時30分〜午後3時
場所:山口市歴史民俗資料館 学習室
定員:50名(先着順) 聴講希望の方は電話で申し込み下さい。(Tel 083-924-7001)
講師:山口大学人文学部准教授 尾崎千佳

■ ギャラリートーク「防長の歴史と連歌・俳諧」
日時:11月11日(日)午後1時30分〜
場所:山口市歴史民俗資料館「山口の連歌と俳諧―宗祇から菊舎まで―」会場
講師:学芸員原崎洋祐

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